お家騒動か労使紛争か?-ある事業承継事例①

甲社の河野会長は、戦後間もなく、精密機械製造業を創業し、年商30億円、従業員60名、の会社に育て上げた。間もなく80歳になるが4人の子供がある。

自分は会長として、長男太郎(40歳代半ば)が社長として、同族経営を行っていた。

近頃は月に一回くらいしか会社に行かない。

二男の次郎は、上場企業に勤めていたが退社し、甲社に入社した。

しかし、社長の長男太郎や従業員たちと反りが合わず、甲社を辞め甲社の非常勤取締役となっている。三男三郎は他社に勤務し、長女 が甲社の監査役となっている。

また、非同族の従業員2名が取締役になっている。

非同族の役員2名は、それぞれ工場長、営業部長として甲社の経営方針に注文をつけ、何かとうるさい。

甲社がここまで業績を伸ばしてきたについては、この2名の貢献度が大きい。

河野会長は、どう考えたのかはわからないが、非同族の営業部長を取締役から降ろし、首にすると従業員に知らせ、内容証明郵便で件の営業部長氏に通知した。

非同族従業員に対する分断策か否かは不明だが、工場長に対してはそのような処置をとらなかった。  そうしたところ、従業員が反発し、労働組合を作って経営陣に対抗するという事態になった。

労使紛争の勃発だ。

① 労使紛争、②お家騒動、③赤字による倒産の危機、④黒字による脱税及び関係諸官庁による手入れ、の4つを乗り切ってこそ企業は一人前の大人の企業として成長・発展できるのだから、そのうちの一つや二つが会社に起ったからといって、経営者はじたばたしてはいけない、と述べていた経営評論家がいたが、弁護士として長年、色々な紛争をみてくると、つくづく通りだと思う。

(この項続く)